「北斎・広重展(後期)」
川崎・砂子の里資料館
2012年2月6日(月) ~ 25日(土)
日曜祭日休館
http://www.saito-fumio.gr.jp/

京急川崎駅近く旧東海道沿いにある川崎・砂子の里資料館で開催されている「北斎・広重展」に行ってきました。この資料館は、こぢんまりとした雰囲気の中、ガラスケース越しではなく間近で浮世絵を鑑賞できるのがとても嬉しい。今回の展覧会では、世界でも有名な大作 葛飾北斎の「冨嶽三十六景」をはじめ歌川広重「不二三十六景」など日本の象徴である富士山を様々な角度から捉えた版画を中心に数点の肉筆浮世絵を併せ66点もの浮世絵が展示されている。
印象派の画家たちに強い影響を与えたと言われる飾らない庶民の日常生活を題材に大胆な構図で描かれた版画は、とても興味深い。そして何より色使いが鮮やかで美しい。特に、空や海の青色は濃淡色やぼかしで表現され季節感と温かみを感じる。きっと当時の人々は、この名所絵版画を見て「こんな場所が我が国にあるのか。」と感動し、今や日本橋から電車で1、2時間で行ける名所を数日かけて旅に出たのか思うと海外旅行をするようで心が弾む。余談だが、旅先で遊女にだまされたりするのだろうか。
さておき、今回展示されている江戸を振り出しに名所を巡る北斎の双六絵版画は必見である。この作品が描かれたのも旅を通じて得る新しい発見や人の出会い、そして豊かな感受性と未知への強い探求心の表れだと思います。
お勧め作品
ぜひこの機会に足を運んでみて下さい。
(光元ちさと)
「再び!にゃんとも猫だらけ」展
平木浮世絵美術館
2012年1月3日(火) 〜 3月31日(土)
毎週月曜日休館
http://www.ukiyoe-tokyo.or.jp/

今年は例年に比べ、非常に雪の日が多いようです。雪といえば「雪やこんこ」と童謡を思わず口ずさみたくなりますが、そこに登場する炬燵で丸くなる猫の姿は日本中で親しまれていることでしょう。このように私達の日常に溶け込む猫の姿は今に始まったものではありません。江戸の人々の生活を映す浮世絵の世界を覗いてみると、彼らの日常風景の一部であった猫たちが活き活きと描かれています。そんな猫たちの登場する浮世絵に焦点を当てたのが、「再び!にゃんとも猫だらけ」展です。
展覧会は「第1弾 猫と遊ぶー美人画の猫—」(1月3日〜29日)、「第2弾 化け猫騒動」(2月2日〜2月26日)、「第3弾 猫で遊ぶー戯画とおもちゃ絵」(3月3日〜31日)の全3期間に分けられており、各テーマで分類された計200点もの猫の姿を見ることができます。今回私は歌舞伎で人気を得た化け猫を描いた「第2弾 化け猫騒動」を鑑賞してきました。
猫にまつわる伝説は日本各地に存在しますが、江戸時代にはそれを材に取り多くの芝居が創作、上演されました。その中でも歌舞伎『独道中五十三駅』における「岡崎の化け猫」は大変な人気を得、様々に脚色され上演されたのと同時に、数々の優れた浮世絵師らがその場面を描いたと言います。本展覧会にも歌川国芳、国輝、国貞らが描いた「岡崎の化け猫」が展示されていました。そこから、それぞれの「化け猫」像とその見せ方の工夫をうかがい知ることができます。共通しているのは言うまでもなく、どの作品にも現在の私たちが考える愛らしい猫の様子からはかけ離れたおどろおどろしい猫たち、及び猫の精である女の姿が描かれていることでしょう。もちろん浮世絵師たちの発想の根源には歌舞伎作品があった訳ですが、猫にまつわる怪異のイメージが共有され、かつそこに彼らが非常な興味を持っていたことが分かります。
浮世絵とは江戸庶民の日常を描くものとして知られていますが、浮世絵師たちはそんな日常の世界の秩序や論理、常識を超えた、あるいはそれらが反転する怪異に満ちた夜の世界に心惹かれたのではないでしょうか。猫は私たちの生活に深く関わりながら、決して人間に従うことなく独自の時間を生きているというイメージは江戸時代当時にも一般的であったと考えられます。だからこそ、人々は日常を脅かす非日常の表象として猫、あるいは秩序に支配される側にあった女の恨みと猫の結びつきを考え、浮世絵師たちはそうしたモチーフを描いたのでしょう。様々な作品に描かれる、闇夜を照らす月のごとく光る化け猫たちの瞳の光を見ながら、そんな恐ろしくも魅力的な「非日常」に浸ってみてはいかがでしょうか。
(富永真樹)
あけましてお目出度うございます。
今回は新年お薦めの展覧会を紹介致します。
「肉筆浮世絵の美 - 氏家浮世絵コレクション」
鎌倉国宝館(鶴岡八幡宮境内)
2012年1月1日(日) 〜 2月12日(日)
毎週月曜日休館
http://www.city.kamakura.kanagawa.jp/kokuhoukan/24-01ujiie.html
氏家コレクションはこのところ正月に鎌倉国宝館で公開されていると聞いていたが、今回初めて同館を訪れて、このコレクションを鑑賞する機会を得た。会場は二分割されており、「肉筆浮世絵の美―氏家浮世絵コレクション」展の他、平常展示「鎌倉の仏像」も鑑賞することができる。「鎌倉の仏像」の方は重要文化財・重要美術品等の仏像の展示となっており、鎌倉時代に鎌倉で造られたと思われる作品が中心で、京・奈良の同時代の作品とは異なって見えた。平常展示を一瞥して目当ての肉筆浮世絵展の会場に入ると、菱川師宣・宮川長春・懐月堂安度と、立て続けに初見の作品が目に入ってきた。ガラス越しではあるが、割と間近に観ることができる。個人的には、
などがお薦めである。他にも名品は数多いが、ここではこれくらいに。
表装に工夫を凝らした作品の他、保存上もう少し手を加えた方がよいと思える作品も見受けられたが、総じて大事にされている。このコレクションを蒐集された氏家武雄氏に生前お会いできなかったことは誠に残念である。
鶴岡八幡宮への初詣の参拝客は押すな押すなの人混みであるが、そこからわずか数10メートル離れた国宝館で、ゆっくりと肉筆浮世絵を鑑賞することができたのは至福であった。
展覧会図録(2,300円)は、全期間出品された全ての作品が136ページに及ぶフルカラーで紹介されている。
内村美術店(現:株式会社 江戸文物研究所)は開業三十年の年月を重ねて参りました。これも偏に皆様方のお陰と感謝致しております。
三十周年記念事業の一環と致しまして肉筆浮世絵を中心とした江戸絵画紹介のウェブサイトを開設致します。